地球環境時代における都市環境計画の方法論
1. 熱・風・水環境の評価と計画への展開
Evaluation of Thermal, Wind, and Water Environment
世界諸国で気候変動に伴う海水面上昇、異常気象の増加や震災等の自然災害による甚大な被害が生じています。本研究では、そうした課題への適応策として、街区から地球環境までのシームレスな空間計画として、エコロジカル・プランニングの1つとなる緑地計画を融合する「気候変動適応型の都市環境計画」の検討・提案を福岡・名古屋都市圏や東京首都圏を対象に行っています。特に近年は、甚大化する水害に対して、レジリエントな都市空間を創出・維持するためのグリーンインフラ計画に関する研究を行っています。
【現在進行中のプロジェクト】
- 2020~2022年度, 基盤研究(B), 代表, 流域レジリエンスに向けた雨水浸透・貯留・流出抑制型緑地管理システムの構築.
- 2020~2023年度, 国際共同研究強化(B), 分担, 健康都市計画手法の開発と2つの深刻な温暖化に直面する成長国都市への応用.
2. 持続可能なグリーンインフラ・マネジメント
Sustainable management of Green Infrastructure
人口減少期に突入した国内では、都市・農村・里山地域の管理放棄が進行し、自然災害への脆弱性の増大、生態・生活環境の劣化が課題となっています。こうした状況に対し、個々の緑地の特性を踏まえ、限られた管理労力で求められる機能(健康増進やコミュニティ形成、防災・減災、景観向上等)を最大限に発揮しうるランドスケープ・マネジメントが必要とされています。本研究室ではこれまで、「対象とする緑地(景観要素)は年間で何時間の管理作業が必要か」を定量的に評価する「管理作業量」という指標を提案し、ランドスケープ・マネジメントの提案に取り組んできました。特に、都市部や田園部、森林部に存在する多様な緑地の管理作業量の定量化・可視化を行っています。さらに現在、生産性と環境保全を両立しうる都市・農村のまちづくり構想を支援するツール開発に関する研究を行っています。
【現在進行中のプロジェクト】
- 2020~2023年度, 科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム, 分担, 農林業生産と環境保全を両立する政策の推進に向けた合意形成手法の開発と実践.
3. 都市農村の統合的な計画体系・制度
Integration of Urban-Rural Planning System and Institution
都市と田園との新たな関係性の構築に向けて、ランドスケープ・エコロジーの視点を基に、統合的な計画体系・制度に向けた研究を進めています。また、人口減少時代に突入した今日、恒久的緑地の新たな確保から、都市に残存する民有の農地・里山等をその土地の空間的・社会的特性に合わせて暫定的緑地として管理・利用していくものへと計画の主軸が移行しています。多様な主体が柔軟に緑地の計画づくり・維持管理に参画できる仕組みづくりに関する研究を行っています。イタリア・カターニャ大学とも協働で国際研究を行っています。
【現在進行中のプロジェクト】
- 2019~2020年度, 鹿島学術振興財団 2018年度 研究助成, 代表, 管理・利用・環境機能の統合評価に基づく都市周縁部の緑地計画の提案.
4. アジア・メガシティ・メタシティにおける新たなライフスタイル・ワークスタイルに応じた都市空間戦略
世界各国、特にアジア・アフリカにおける諸都市では、急激な都市への人口集中により、その持続可能性が脅かされています。また、2020年より全世界的に拡大する新型コロナウイルスにより、都市・農村部における働き方・住まい方が大きく変化しています。そうした状況に対し、持続可能な都市空間の構築に向け、人口動態・土地利用パターン分析、コンパクト+グリーンシティの評価指標の開発、都市のデジタル化による効果的な空間戦略の実証的研究・提案を行っていきます。
東京と上海の都市成長
【現在進行中のプロジェクト】
- ドイツ・ドレスデン工科大学、中国・浙江大学、ノルウェー・ノルウェー工科大学との共同セミナーシリーズ Towards the Digital-Urban Era
5. 次世代バイオミメティクス技術―持続可能な農業に向けた蟲瞰学
「人間と自然の共存」は、様々な学問的、社会的取組をもってしても未だ解決できていない地球全体での大きな課題です。食料増産と環境保全という相矛盾する問題に対し、生物学や工学、農学、環境学、情報学、生態学の多様な分野の研究者との協働により、次世代バイオミメティクス技術を用いた解決方法に関する研究を行っています。具体的には、景観生態学の有する環境情報の統合化・可視化技術と、感覚生理学が明らかとするナノスケールでの生物の構造・機能とを架橋し、生態系における生物・環境間や生物間での相互作用を情報ネットワーク構造として記述することで、生物多様性と農業生産性の両立を実現するプランニング手法・技術―“バイオミメティク道しるべ(Biomimetic guides)”を提案するものです。